従業員の退職時に注意しなければならない最後の給料の支払い方

 これまで、従業員の退職の際に注意しなければらないこととして、退職願を必ずもらっておいてくださいということをお話ししました。

 今回は、退職の際に問題になることがある最後の給料の支払い方についてお話します。

 従業員がトラブル含みで会社を辞めた場合、本人ではなく、その家族が本人の代理人であるとして会社に最後の給料をとりに来るというケースをよく耳にします。

 しかし、給料は本人に直接支払うべきもので、代理人に渡すべきものではありません。

 法律上、労働者の賃金というのは、その労働者に直接支払わなければらなないとされているのです(労働基準法24条)。

 では、従業員が未成年の場合はどうでしょうか?

 従業員が未成年だったから、親が給料を取りに来た時に渡してしまったというケースをときどきお聞きします。 

 しかし、仮に従業員が未成年であっても、賃金を親に手渡しすることは許されません。


 労働基準法59条は
「未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代って受け取ってはならない。」と定めています。

 間違って、親や家族に払ってしまった後に、従業員本人から再度支払いを求められれば、会社は再度支払いに応じる義務が出てきてしまいます。つまり、二重払いをさせられることになります。

 賃金は直接本人に支払わなければ、有効な支払いとはならないからです。

 退職した従業員に最後の給料を支払うときは、その従業員の本人名義の口座に振り込むか、本人に取りに来てもらって手渡しをし領収書をもらうか、のいずれかの方法をとるように心掛けてください。

 従業員の退職をめぐるトラブル、解雇のトラブルでお困りの方は、顧問弁護士にご相談いただくか、当事務所にご相談ください。

ソフトウェア、システム、ゲームなどの開発を外注する場合の注意点

 先日、モバイルゲームやオンラインゲームの制作を、フリーのスタッフに頼んだり、あるいは制作会社に外注に出す場合の注意点が3つありますということをお話ししました。

① 外注に出したゲームのプログラムや映像の著作権をちゃんと自社に移転しているかどうか

② 外注に出したゲームのプログラムや映像の著作人格権をきちんと処理できているかどうか

③ 外注するゲームの仕様をきちんと特定できているか

という3点です。

 これは、システムの開発や、映像の制作、ソフトウェアの開発を他社に外注する場合でも同じことです。

 今回は、一番トラブルの原因になりやすい③についてお話ししたいと思います。

 たとえば、A社がゲームの製作をB社に外注する場合、一番トラブルになるのは、A社が考えているゲームの仕様がB社にうまく伝わっていないというケースです。

 ゲームというのは作り始めてみないとイメージが具体化しないという面もあり、仕様を具体的に決められないまま、開発がスタートされることが非常に多いです。

 その結果、開発途中の確認の場あるいは、B社がA社にゲームを納品しA社が内容を確認した段階で、A社からB社に対し「思ってたものと違う」とクレームがつくことになります。


 そして、「A社がB社に対し無償での修正、追加を要求する。」

    →「B社が無償での作業に耐えられなくなって修正を拒否する」

    →「A社としては代金は支払えないと、B社に対して支払いを拒絶する」

    →「B社が代金の支払いを求めて裁判を起こす」
    あるいは「A社が前払いした代金の返還を求めて裁判を起こす」

    …という流れをたどります。


 このようなトラブルの原因はそもそもA社がB社にゲームの制作を外注する際にゲームの仕様が特定されていないという点にあります。

 開発作業に入る前の段階で必ず契約書を作成し、その中でゲームの仕様についてできるかぎり具体的に記載する必要があります。

 私のこれまでの経験で見るところ、契約書の段階で仕様を特定できているかというのは、ゲーム制作会社、システム制作会社の社運を決める重要事項です。 
 仕様を特定しないまま作業にかかる制作会社は結局、発注者とトラブルになったり、発注者から膨大な修正を要求されてプロジェクトが赤字になったりして、市場から撤退していきます。 
 これに対し、順調に発展している制作会社ももちろんありますが、そういった会社は契約書がきちんと作られ、契約書の中で仕様が特定されています。


 まさに、契約書の出来不出来が企業の運命を決するのです。

 会社を守るため、従業員を守るために、契約書は必ず作りましょう。


 システムの開発については、経済産業省がモデル契約書を発表していますので、参考にしてみてください。

 http://www.meti.go.jp/policy/it_policy/keiyaku/model_keiyakusyo.pdf に公表されています。

 ゲームやシステム開発、ソフトウェア開発の際の契約書作成で困られた時は、顧問弁護士にご相談いただくか、ぜひ当事務所までご相談ください。

買主の検査義務、検収についての注意点

 企業間で継続的な取引を始めるにあったて、「取引基本契約書」という契約書を作成することが多いと思います。

 取引基本契約書の内容は様々ですが、2社間で継続的な売買をする場合には、その売買の基本的な条件を決めるために「取引基本契約書」が作られます。

 今回は、このような内容の「取引基本契約書」を作るときに気をつけなければならない注意点の一つとして、商法526条について取り上げたいと思います。

 商法526条は次の通り規定があります。

 まず、1項ですが、

 「商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。 」

とあります。

 つまり、買主は物が届いたら、遅れることなく、検査しなければなりません。

 そして、2項ですが、

「買主は、同項の規定による検査により売買の目的物に瑕疵があること又はその数量に不足があることを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その瑕疵又は数量の不足を理由として契約の解除又は代金減額若しくは損害賠償の請求をすることができない。」とされています。

 つまり、検査の結果、商品に欠陥があることが分かった場合や、数が不足していることが分かった場合は、買主は売主に対してすぐにそこのことを連絡しなければ、そのことを理由とする代金減額の請求や損害賠償請求ができなくなってしまいます。

 このように商法526条は、買主に義務を設ける、売主にとって有利な規定になっています。

 取引基本契約書を作成するにあたっても、この商法526条を意識することが必要です。

 つまり、買主の立場からすれば、たとえば仕入れる物が大量で、すべてを1個1個検品できないような場合は、どの程度検査すれば、買主としての検査の義務を果たしたことになるのかを「取引基本契約書」で書いておかなければなりません。

 そうでなければ、たとえば、100個に1個というような抜き取り検査しかしておらず、あとで不良品が出てきたような場合に、売主から商法526条の適用を主張され、代金の減額や損害賠償の請求に応じてもらえなくなってしまう恐れがあります。

 この商法526条については、たとえば、「この取引については商法526条は適用しない」と取引基本契約書に盛り込むことも可能です。

 契約書には、商品の欠陥についていつまでい発見したものなら保証するということはよく書いてあります。ところが、欠陥を発見したらすぐに相手に通知しなければならないということは意外に知られていません。この点も商法526条に規定があるので、要注意です。

 逆に、売主の立場からみれば、商法526条は、「使える条文」です。 

 「この取引については商法526条は適用しない」などといった記載がなければ、契約書に特段の規定がなくても、商法526条が適用されます。

 買主が納品後検査すべき時期をとっくに過ぎているのに、あとからクレームをつけてきた場合などには、商法526条を指摘して交渉を有利に進めることができるのです。

 取引の際にきちんと契約書を作ることは、企業をトラブルなく順調に発展させるために、大変重要なことです。

 契約その作成方法でお困りの方は、顧問弁護士にご相談いただくか、当事務所にご相談ください。

著作人格権の処理について

 イラストやプログラム、ウェブコンテンツや、ゲームなどに関連する契約書を作る場合、著作権だけではなく著作人格権という権利に配慮する必要があります。

 先日、 ゲームを作る場合の著作権の処理についてお話ししましたので、引き続き、ゲームを例にとって、著作人格権についてお話ししたいと思います。

 たとえば、ゲーム制作会社がゲームの制作を他社に外注したり、フリーのスタッフに外注したりする場合は、

 外注に出したゲームのプログラムや映像の著作人格権をきちんと処理できているかどうかに気をつけなればなりません。 

 では、そもそも著作人格権とはなんでしょうか。

 著作人格権の内容をいろいろあるのですが、その中で最も注意しなければならないのは、同一性保持権と呼ばれる権利です。

 同一性保持権とは、著作物の内容について自分の意思に反して勝手に変更されないという著作者の権利です。


 注意しなければいけないのは、著作人格権とは著作権と全く別の権利で、契約によっても譲り受けることができないとされているのです。

 ですので、A社はB社からゲームの著作権を譲り受けることを契約書で明記していても、B社が著作人格権を行使することを妨げることはできません。

 仮に、A社がB社で制作させた映像をあとで修正したくなった場合、A社としてはいちいちB社に了解をもらわなければならず、しかもB社が了解しなければ修正できないということになってしまいます。

 では、どうすれば、このような事態を防げるでしょうか。

 通常は、A社とB社の契約書の中で、B社に「著作人格権は行使しない」ことを誓約してもらう方法をとります。

 この点を忘れると場合によってはゲームの修正にいちいちB社の許可を求めなければならず、納品後のゲームの運営に支障をきたす事態にもなりかねません。

 では、B社から「著作人格権は行使しない」ことを誓約してもらえば十分でしょうか。

 そうではありません。

 B社はもしかすると別のC社にゲームをさらに外注しているかもしれません。あるいは会社に発注しなくても、フリーのスタッフDに外注しているかもしれません。

 この場合、B社に著作人格権は行使しない旨の誓約をしてもらうだけでは足りず、CやDに対するフォローも必要になってきます。

 著作人格権の処理で困られた時は、顧問弁護士にご相談いただくか、当事務所までご相談くださ。

取引基本契約書を作成する際の注意点①-合意管轄について

 企業間で継続的な取引を始めるにあったて、「取引基本契約書」という契約書を作成することが多いと思います。

 たとえば、A社がB社から継続的に仕入れをするような場合や、A社からB社に継続的に工事を発注する場合などにこのような契約書が作られます。場合によっては「業務提携契約書」などという名称である場合もあると思います。

 「取引基本契約書」あるいは「業務提携契約書」で基本的な取引条件を決めておくことは、取引のトラブルを防ぐ上で極めて重要なことです。

 日々の業務に追われると、どうしても契約書は後回しになりがちですが、それでは、将来のトラブルを防いでいい企業を作ることはできません。

 「取引基本契約書」を作成するときに注意しなければならないことは、その取引の内容によってかわってきます。 ただ、どんな取引でも問題になりやすい注意すべき点がありますので、ここでは、以下の5回に分けて、取引基本契約書を作成するときの注意点についてお話ししていこうと思います。

① 取引基本契約書で管轄裁判所について合意する場合の注意点

② 取引基本契約書で商品の供給義務を定める場合の注意点

③ 取引基本契約書を作成する際に気をつけなければならない下請法に関連する注意点

④ 取引基本契約書を作成する際に気をつけなければならない商法526条に関する注意点

⑤ 海外の企業と取引基本契約書を締結する際の注意点

 今回は、まず、一番簡単な①の「取引基本契約書で管轄裁判所について合意する場合の注意点」についてお話ししたいと思います。



 取引基本契約書を作るとき、最後に「この契約に関連する一切の紛争は○○地方裁判所を第1審の専属的合意管轄とする」などと記載することが多いと思います。

 こういうのを、「管轄裁判所の合意」といいます。

 では、この条文はいったいどういう意味なんでしょうか。

 実はこの条文は、万一、取引がトラブルになったり、裁判になってしまった場合に、実際上重要な影響がでてくる規定です。


 ここでは、大阪の会社(A社)が東京の会社(B社)に対し、継続して商品を販売することになり、取引基本契約書を作成する場合を例に考えてみます。


 このような取引でどのようなトラブルが想定されるでしょうか。

 想定されるトラブルはいろいろありますが、たとえば、A社がB社に納品した商品についてB社が代金を支払った後で、B社が商品に問題、欠陥があることに気付いたと主張して、B社がA社に対し代金の返還を求めてくるというトラブルが想定されます。

 このような場合、商品に欠陥がなければA社としては当然、返金を拒絶することになるでしょう。

 その場合、まずはB社と裁判を避けるために交渉の努力をすることになりますが、交渉が決裂した場合はB社がA社に対して訴訟をしてくるかもしれません。

 このとき、もしさきほどの「管轄裁判所の合意」をしていなければ、どこの裁判所に訴訟を起こすかは、法律の規定に従うことになります。

 法律の規定に従えば、このケースでは、東京の裁判所でも大阪の裁判所でもいずれでもよいことになることが多いです。

 そうすると、東京の会社であるB社が大阪の裁判所を選ぶことは考えにくく、東京の裁判所で訴訟を起こすでしょう。

 すると、A社の弁護士は、原則として裁判の際は東京の裁判所に行かなければなりません。

 弁護士はこのような出張については、「日当」を請求するのが通常です。

 裁判のたびに日当がかかるとなると、どうしても弁護士費用が多額になるという問題点が出て来るのです。


 たとえば、大阪の弁護士が東京地裁に10回出廷すれば、裁判の費用とは別に60万円~70万円程度の日当を請求する弁護士も多いと思います。

 このように実際上、遠方の裁判所への出張は、企業にとっては大きな負担となります。

 ところが、このケースで、「取引基本契約書」に「この契約に関連する一切の紛争は大阪地方裁判所を第1審の専属的合意管轄とする」などと記載しておくと、A社は法律の規定に関係なく大阪でしか裁判を起こせないということになるのです。

 このように「管轄裁判所の合意」は実際に裁判になったときには、企業の負担や実際に裁判の対応をできるかに大きくかかわってきます。

 また、裁判にならなければ関係がないのかといえば実はそうではありません。

 「管轄裁判所の合意」が自社に不利になっており、裁判になれば多額の弁護士費用がかかることが予想される場合、なんとしでも裁判を避けたいという意向が働き、裁判前の交渉で弱含みの対応にならざるを得ないケースが多々あるのです。

 このように「管轄裁判所の合意」は、いざトラブルになったときには大変重要な意味をもつ規定です。

 「管轄裁判所の合意」は単に書ければよいというものではなく、書き方も重要です。

 この点についての記載にお困りの方は、顧問弁護士にご相談いただくか、当事務所にご相談ください。

オンラインゲーム・モバイルゲームの著作権処理に関する注意点

 モバイルゲームやオンラインゲームに関するご相談が大変増えています。

 特に、GREEやモバゲーのサービスのユーザーが増え、ゲーム業界のすそ野が広がっていっているのを日々感じています。

 いままでゲームの業界に手を出したことがなかった方が、新しくゲーム業界に入ってくるということもかなり増えているようです。

 ただ、ゲームについては著作権や契約の処理が複雑で、トラブルも大変増えています。
 
 このブログでもトラブルをなくすために何が必要なのか、まずは基本的なところから書いていきたいと思います。

 ゲームを作る場合、自社だけでなく、フリーのスタッフに頼んだり、あるいは制作会社に外注に出すことも多いと思います。

 このようなときに注意しなければならないのは、

① 外注に出したゲームのプログラムや映像の著作権をちゃんと自社に移転しているかどうか

② 外注に出したゲームのプログラムや映像の著作人格権をきちんと処理できているかどうか

③ 外注するゲームの仕様をきちんと特定できているか
という3点です。

 実は③についてのトラブルが一番多いのですが、今回は一番基本の①についてお話します。

 A社がゲームの製作をB社に外注するケースで考えます。

 この場合、B社が制作したゲームの著作権は原則としてB社に帰属します。 

 ということは、A社はこのゲームの著作権をB社から譲り受けることを契約書で明確にしておかなければなりません。

 よくありがちな誤解は、「製作費を支払ってるんだから、契約書にわざわざ書かなくても著作権は移転しているのがあたりまえだろ」という考え方です。 

 この考え方は成り立ちません。「B社が著作権を維持したうえでA社にはゲームとして使うことを認めるだけ」という権利関係もありうるからです。こういう権利関係は「利用許諾」と呼ばれます。この場合も当然製作費は支払うのですから、「製作費を支払ったこと=著作権を移転したこと」にはなりません。


 では、A社はB社から著作権を移転してもらえれば安心でしょうか。

 実はそうではありません。

 B社はもしかすると別のC社にゲームをさらに外注しているかもしれません。あるいは会社に発注しなくても、フリーのスタッフDに外注しているかもしれません。

 この場合、ゲームの著作権は原則として、C社やDに帰属することになります。

 ですので、「BからAに著作権が移転する」と契約書で書いていても、そもそもCからBに著作権が移転していないと、結局Aは著作権を取得できません。

 B社とC社の間でトラブルが発生するなどした場合、Cが自社が作ったゲームを勝手にA社が公開した、とA社を訴えてきたらA社は負けてしまいます。

 このリスクについての対処をどうするか考えなければなりません。

 すぐに思いつく対処方法は、B社とA社との契約書で下請けを禁止にしてしまうことです。

 しかし、この方法はB社がこっそり外注してしまったり、あまり意識せずにフリーのスタッフに頼んでしまった場合には対応できません。

 では、どうすればよいでしょうか。


 通常、こういうケースでは、B社とA社の契約書の中で、B社に発注したゲームの著作権がすべてB社にあることを保証してもらったうえで、それをA社に移転させるという処理をしています。



 もし、ゲームの著作権の処理で困られた時は、顧問弁護士にご相談いただくか、当事務所までご相談ください。

就業規則を作っておかないと困ること

 就業規則を作っていない会社というのは多いと思います。

 しかし、就業規則を作っていないといざトラブルになったときに、困ることがいろいろ出てきます。

 その1つが従業員を解雇しなければならなくなった時です。

 いま、解雇された従業員が不当解雇だとして会社を訴える訴訟が激増しています。

 このように会社が不当解雇で訴えられると、裁判所から会社に対し「就業規則を証拠として提出して下さい」と指示されます。

 なぜそのような指示がされるかというと、「どういう場合に解雇する」ということは、法律上就業規則に書いておかなければならないとされているからです。

 解雇ができる場合がどんな場合かということは就業規則に書いてるはずだから、今回の解雇が就業規則に記載がある「解雇ができる場合」にあたるのかどうかをチェックしていく、というのが裁判所の考え方です。
 就業規則に書いてある「解雇ができる場合」以外は解雇はできないと考える裁判官も多くいます。 

 だから、裁判所は「就業規則を提出してください」と言ってくるわけですが、このときに「いえ、就業規則は作っていません」ということは、大変、分が悪いのです。

 労働関係の裁判は急増しており、いつ自社でそのようなトラブルが発生しても不思議ではありません。

 なお、そもそも、就業規則を作成する義務は「常時10人以上の労働者を使用する使用者」に課されていますので、従業員が10人未満であれば、就業規則を作成しないくてもそのこと自体は法律的に非難されることはありません。 

 しかし、そのような会社であっても従業員に対する解雇や懲戒の事由を明確にする意味で、就業規則を作っておくことをお勧めします。

下請トラブルの解決法

 みなさん、「下請かけこみ寺」という制度をご存じでしょうか?

 これは、中小企業間の下請取引トラブルのために設けられた制度で、財団法人全国中小企業取引振興協会というところが、中小企業庁から委託を受けて行っています。

 要するに、下請取引のトラブルを「裁判をしないで、早く解決したい」という要望にこたえるためのものです。

 そもそも企業間のトラブルには裁判での解決が難しいものが多くあります

 たとえば

「納品後に発注先から代金の値引きを求められ、発注時の代金での支払いに応じてもらえない」

「仕事をもらう見返りに、発注先から物品を購入するように求められ困っている」

「製品に問題がないのに、問題があるとして納品を受け取ってもらえない」

「発注時にきちんと値段が決まっておらず、納品後にこれまでの慣例による値段を請求したら、応じてもらえず困っている」

「原価割れする価格で発注され、協力しなければ、今後の発注はないといわれている」

等のトラブルです。

 「下請かけこみ寺」の制度は、このようなトラブルについて、企業間で話をしても解決に至らない場合に、第三者の弁護士が間に入って話を聞き、解決を目指す制度です。

 裁判と違ってスピードが重視されており、3ヶ月以内の解決を目指す制度設計がされています。

 特に最初からきちんと価格が決まっていたと言い難い場合には、話し合いで支払代金を決めていく必要があり、裁判所での解決にはなじまないでしょう。

 このような場合に、「下請かけこみ寺」の制度を使って、迅速な解決を目指すことができます。

 下請け取引の値引きや納品のトラブル、支払時期のトラブルでお悩みの方は、泣き寝入りをしないで、顧問弁護士にご相談いただくか、当事務所にご相談ください。

他社から社外取締役になってくれと頼まれたら注意すること

 経営者の方の中には、取引先や関係会社から、「取締役になってくれ」と頼まれた経験のある方も多いと思います。

 こういった、会社の外部から招く取締役のことを「社外取締役」といいます。

 では、社外取締役になってくれと頼まれたときにどういう点に注意しなければならないでしょうか。

 注意しなければならないのは取締役は会社や一般消費者に対して損害賠償の責任を負担することがあるということです。

 そもそも取締役とは法律上、会社の社長(代表取締役)の仕事を監視するという役割があります。

 取締役になったのに、会社のことには無関心で、会社の代表取締役が会社や消費者、取引先に損害を与えているのを放置したというような場合は、社外取締役であっても損害賠償責任を負担します。

 たとえば、会社に資金繰りがいきづまっているのに、代表取締役が商品を取引先に発注し、納品されたとたんに会社を倒産させてしまったというような、取込詐欺の事例で、裁判所は社外取締役にも損害賠償責任を認めています。

 このように、他社の取締役になることは、仮に社外取締役であっても、予測することができないリスクをしょいこむことだということを認識しておく必要があります。

 たとえば、銀行に対し粉飾決算して融資を取り付けた場合や、問題のある商品を消費者向けに販売して会社のブランド価値を傷つけたような場合は、社外取締役も損害賠償責任を問われる可能性があります。

 どうしても、「取締役になってくれ」といわれて、断れない場合、いわゆる「責任限定契約」という契約をしておかれることをおすすめします。

 これは、社外取締役になる人がその会社との間で契約を結んで、自分が会社に対して負担するかもしれない損害賠償責任について、自身が受け取る役員報酬の2年分の範囲に限定することができる契約のことをいいます。

 ただし、この契約も社外取締役の会社に対する責任を限定するだけで、第三者に対しては有効ではありません。

 他社の取締役になることを頼まれた場合は、軽々しく引き受けてあとでとんでもない負担を負うことにならないように十分にリスク分析をしておく必要があるでしょう。

従業員の引き抜き行為の防止策

 東北沖での地震の被害、本当に痛ましい限りです。

 特に福島原発の危険な場所で作業されている作業員の方々には本当に頭が下がります。

 1人でも多くの人が助かり、一刻も早く平和な状態を取り戻せるように祈っています。

 さて、前回、退職した従業員による引き抜き行為が起こってしまった場合の対応策を書きました。

 しかし、そもそも引き抜き行為の際には、会社にとってネガティブな内容、たとえば、この会社で働いていても給料はあがらないなどという誘い文句で、引き抜きが勧誘されることが多く、たとえ引き抜き行為に対してすばやく対応したとしても、一定程度会社と従業員の信頼関係を害してしまうことは否定できません。

 そこで、このような引き抜きのトラブルを起こさないための予防策が大切になってきます。

 では、具体的にはどのような方法があるのでしょうか。

 たとえば、従業員から、退職後も一定期間は同業者に就職したり、同業で起業したりしない旨の誓約書を取り付けておられる企業も多いと思います。

 このような対策も一定程度有効ではあるのですが、「一定期間は同業者に就職したり、同業で起業したりしない旨の約束」は裁判所で効力を認められるとは限らないというところに難点があります。 

 特に期間や地域の限定がないものや、就職してはいけないとされる業種が明確でないものは、裁判所で無効とされるリスクが高くなってきます。

 裁判所は従業員が前職の経験を生かして同業に就職することは従業員の権利であり、従業員が一切前職と同じ業種につけなくなるような約束は、従業員の職業選択の自由を侵害すると考えているのです。


 そこで、お勧めの方法は、「他の従業員に対して転職を勧誘したり、起業を勧誘したりしない」という旨の誓約書をとっておくことです。 

 このような内容であれば、従業員の職業選択の自由を侵害することもなく、裁判所でも効力が認められます。 

 また、顧客をとられる心配があれば、「退職後あるいは職務外で顧客に対して連絡をとらない」という誓約書を有効です。
 しかし、このやり方は、「自分から連絡をとったんじゃなくて、お客さんのほうから連絡してきたんだ」という言い逃れを招きやすいので、この点は工夫する必要があります。

 従業員の引き抜きの問題でお困りの方は、顧問弁護士が、当事務所にぜひご相談下さい。